日本の代表的な鉄骨BIMソフト(鉄骨専用CAD)である『KAPシステム』は、Sグレードのファブリケーターである日本ファブテック株式会社が開発した、「ファブ目線」の鉄骨BIMソフトです。
日本を代表する鉄工所が開発している、まさに痒い所に手が届くソフトウェアであり、近年シェアを伸ばしています。
『KAPシステム』の採用が進む背景
昨今、国内の建築鉄骨は大型化と複雑化が進むとともに益々複雑化しており、構造思想を鉄骨製品化する過程で多くの段階的承認が発生しています。
鉄骨製作工事を円滑に進めるためには、関係者間での速やかな合意形成が重要であることは言うまでもありません。
そのためには、BIMモデルによる「鉄骨の見える化」を通じた作図承認(モデル承認)が最も有効な近道であり、それぞれの物件条件に適した鉄骨BIMソフトの採用が各プロジェクトの命運を握ると言っても過言ではありません。
一方で、通常の鉄骨専用CADでは、設計図書にある複雑な鉄骨の「取合い」が、標準メニューではモデル化できない場合が多く、不足部分を2次元CADで「手作業」追記となり、結果的に全体効率を低下させているのが実情です。
『KAPシステム』は、こうした問題にも対応可能なメニューを標準で実装しており、近年シェアを伸ばしている理由の一つです。
また、大型物件での実績も豊富にあり、その他プロジェクト関係者間で意思疎通や製作管理に活用できる「KAP WEB」にも注目です。
今回は、これらの特徴を持つ『KAPシステム』の主な機能を紹介します。
『KAPシステム』とは?
『KAPシステム』は、PCなどが広く普及する前の1972年から、自社の図面・現寸作業の省力化を目的に開発開始されました。
Sグレードファブである日本ファブテック社(旧片山ストテック)が、ファブ目線でファブの業務をサポートする「鉄骨BIMソフト」として開発したソフトウェアです。
開発当初からコンピューター上にモデルを構築して情報を出力するBIM思想の元、半世紀以上に渡りコンセプトを変えず開発を続けています。
近年では設備CAD連携を皮切りに、他業種ソフトとの連携も新たに取り組み、絶えず進化を遂げています。
『KAPシステム』の最大の特徴がモデリング能力です。大型物件でもスピーディーに、且つ精巧なモデルの構築が可能です。
日本ファブテック社によれば、同社での最大処理トン数は130,000トンであり、また、特殊な取合いや複雑形状の鉄骨へも対応、ユーザーへのリアルタイムサポートも充実しております。
作図はもちろん、特殊鉄骨対応のマクロ作成など、ユーザーリクエストにも柔軟に対応する“鉄工所に寄り添った”ソフトウェアです。
入力システム
入力は2次元で行い、3Dモデルでの確認を部分的に対応させることで、数万トン級の処理も可能。
大型物件でもスピーディーな動作で大きなストレスを感じさせません。
オペレーターは工事全体の3Dモデルを常に確認することで、入力の進捗や工事のイメージなど把握しやすくなりますが、大型物件の入力においてはデータが膨大となるため、そうした確認作業が緩慢な動作の原因となってしまいます。
『KAPシステム』では、大型物件に対応させるべく、全体ではなく部分的な3Dを構築。今入力している箇所のみを3D化し、入力時に確認不要な別箇所のモデル化は省くことで機動性を保持したスムーズな入力を実現しています。
大型物件によくある動作が遅い・重いという問題を、入力とモデル化を別処理で行うことで省力化に!
設計データインポート
他の鉄骨BIMソフトと同様、一貫計算ソフトSS7のデータやST-BRIDGEの取り込み、Revitとの連携も可能です。
また、構造設計データをインポートするために、ゼネコン各社が策定するCSVに対応したフォーマットを構築します。
構造設計データの取り込みでは、「フロア情報」「通り芯情報」「部材配置情報」「メンバー情報」をインポートします。
仕口情報、継手情報の詳細は『KAPシステム』にて入力が必要ですが、あらかじめ部材サイズに合わせた継手情報や、オーソドックスな仕口情報であれば、『KAPシステム』にテンプレートとしてデフォルトで搭載しているので、入力なしにモデル自体が構築されます。
『Revit』データを『KAPシステム』用に変換させる「KAP for Revit」も!
クラウドリモート(大型物件の適応性)
「KAPクラウド」の活用により、複数人でのマルチ入力が可能です。
大型物件の入力において非常に有効で、作業人数の制限もありません。大型物件や工期の短い物件でも、人海戦術によって成果を得られます。
データインポート時には古い情報の上書きなどを防止する工夫も。
同時並行入力には日本ファブテック社が提供するクラウドサーバーを活用することで、各ユーザーが遠隔地からの作業を可能とし、海外拠点と連携するファブリケーターでも場所を選ばず世界各国とのワークシェアリングを実現します。
複数人で取り掛かることができるので、工期の短い案件も対応可能。さらにネット環境があれば遠隔地からもOK、多様な働き方ができる!
自動生成機能
付帯鉄骨、仮設ピ―スなどは、諸条件を予め入力することで自動生成することが可能です。
自動生成機能の多くは、KAPヘビーユーザーであるファブリケーターの要望により搭載された機能です。実工事に耐えられる条件設定の元、開発されています。
自動生成項目
方杖
設計図に記述されている条件に適する箇所すべてに自動再生します
大梁端部ウェブ補剛材
大梁端部のリブPLの距離、スチフナーによる分割数を設定し、自動生成します
デッキ受け
床レベルに応じた条件を設定し、デッキ受材を自動生成します
嵩上げ材
梁レベル差に応じて形状や嵩上げ材の条件を設定し、変形PLを自動生成します
吊りピース
下がり止め
親綱ピース
蝶番
作業負担の削減に寄与!ユーザー・ファブ目線の要望が、常に反映されています。
加工マクロ(特殊取合いへの対応)
「加工マクロ」は『KAPシステム』において特筆すべき機能です。
物件固有の鉄骨納まり、既存の入力メニューでは対応出来ない鉄骨納まりに対し、「加工マクロ」によりモデリングを可能にします。
※加工マクロは日本ファブテック社に作成を依頼します。
- 物件毎に出てくる無限の納まりパターンに対し個々に対応
- パーツ総数は約4000種類
- ユーザーからの要望は早ければ当日実装可能
- 汎用CAD感覚でピースを自在に加工できる機能もあり
免震装置
鋼板壁
吊り材取合い
アンボンドブレース取合い
モデリングが難しい特殊な取合いや、複雑形状の鉄骨には「加工マクロ」が心強い!
『実寸法師』とのリンク
ファブリケーターの抱える問題点を解決
BIM対応が求められる中、ファブリケーターの抱える問題点として、モデルと2次元図面の分断が挙げられます。
不足部分を2次元CADにて追記表現し、「手作業」になってしまうことが多いのが実情です。
専用CADでモデルを構築して図面を出力し、2次元図面を整えますが、検討段階で変更があった場合、その2次元図面のみを修正してしまうと、3Dモデルと2次元図面の分断が生じます。
こうした問題を解決する専用リンク機能を、『KAPシステム』と『実寸法師(株式会社タイワ)』が開発しました。
鉄骨専用2次元CAD『実寸法師』とのリンクにより図面のレイアウト、仮設データ入力、金物データなどをKAPのモデルデータに反映することが可能です。
専用CADと汎用CADの垣根を取り去り、さらなる連携
KAPリンク
KAPリンク
モデルと図面の分断を解決
KAPリンク活用したワークフロー
KAPリンク活用したワークフロー
図面修正ロギング
引き出し線や、断面図を実寸法師上で修正し、KAPへ作業内容を蓄積します。
変更・修正があった場合、KAP側でモデルを修正して、再度出図を行っても修正内容が反映して出図されるので、モデルの変更による手戻りを最小化します。
付帯仮設入力
さや管、ネットフックなどの入力、複写、移動、削除を『実寸法師』上で行い、KAPモデルへ反映させることが可能です。
図面作業に並行して、モデルを同時に仕上げるプロセスです。
変更対応時でも手戻りなく、2次元図面と3Dモデルともに仕上げるプロセスを構築!
KAP WEB(KAP クラウド)
KAPモデルをクラウドサーバーにアップロードすることにより、KAPモデルが持つ情報をブラウザ上で確認することが可能です。
アクセス権も管理されるため、情報が流出する心配もありません。BIM指定案件における合意形成にも、本機能が活用されています。
KAPクラウドでは、いつでもどこでも、「PC」「タブレット」「スマートフォン」各デバイスでアクセスでき、必要な情報を閲覧できます。
When(時間)
昼夜問わず24時間確認が可能。クラウド上のモデルは5分単位で更新し、常に最新情報を表示します。
Where(場所)
インターネットさえ繋がっていれば、現場や取引先などいかなる場所からアクセスが可能です。
各種チェック機能やファブの製作管理にとまらず、関係者が必要とする項目を網羅する、まさに痒い所に手が届く鉄骨BIMソフトです。
閲覧項目
テキスト情報
重量表や材料集計表などから部材指定や材質指定し、必要な情報のみを閲覧。
図面情報
一般図や詳細図などをWEB上で確認。一般図から部材をクリックで、重量や構成ピースなど様々な情報を表示。
3D情報(3Dカラーチェック)
材質や設計マークごとなど、項目によって色分けされたモデルを構築。モデル承認として使用され、BIM取り組みには欠かせない機能。
3D情報(3D詳細図)
製品単位の3Dモデルに、寸法線や材質など表記。複雑な形状の製品を加工する際に、完成形をイメージするサポートとして活躍。
工程進捗管理
製作における各工程の完了予定日をあらかじめ設定し、工程完了時にチェックをつけることで進捗管理が可能。予定が遅れている場合にはアラート表示。
建方進捗管理
製品検査や出荷、搬入など建方に関する進捗情報を管理。QRコード出力へ対応しており、スマートフォンにて読み込むだけで進捗情報を記憶。
IFC出力
BIM標準フォーマットである「IFC」出力は、実寸法師3Dを介して出力できます。
『KAPシステム』で作成したデータを、実寸法師対応フォーマットに変換、読み込みでIFCに出力。2Dデータから、属性情報を付与したIFCデータを作成できます。
今後の機能UP
『KAPシステム』は、更なる新化が期待出来ます。
AI図面美化
AIを活用してKAPから出力した図面を整え、作図業務の省力化を実現。
※現在試用期間中、限定公開にて精度向上を目指す
工程表作成
建方日から製品数、加工箇所、ピース数を逆算して工程表を作成します。材料注文期日や、出荷日などまで情報を付加します。
BIM-CWファスナー連携
ゼネコンが起用した外装業者が出力したCSVファイルから、ルーズホール位置・ファスナーPLの板厚を読み取り、3Dモデルの作成が可能。
『KAPシステム』へファスナー受けを取込み後、リブPLの厚みや枚数は、日本ファブテック社側にて、これまで培ってきたファブリケーターのノウハウをもって自動生成します。
ファスナーは『KAPシステム』の「加工マクロ」のパーツとして変換されてインポートされるため、形状や取付位置の変更などにも柔軟に対応が可能です。
これからの『KAPシステム』
ここまで紹介したように『KAPシステム』は、他の鉄骨BIMソフトにはない機能が豊富です。それらの機能は、鉄骨を製作する側の目線で実装したメニューや、鉄骨業界での実態に即したメニューとなっています。
筆者自身、実際に「加工マクロ」の対応を日本ファブテック社にお願いしたことがありますが、これまで入力出来なかった「取合い」の入力が可能となり、見事にモデリングされたときは、助かったという気持ちよりも嬉しい気持ちの方が強かったことを鮮明に覚えています。
また、『KAPシステム』は、他CADのデータを入出力するための「KAP for Revit」や「KAPリンク」などのインターフェイスが充実しています。これからの『KAPシステム』においては、他システムとの更なる連携により、鉄骨に関連する業務の効率化を推し進める先駆者になって欲しいと願っています。
『KAPシステム』製品情報まとめ
高速な入力を実現
大型物件を前提とした入力システム。部分的な3Dを構築し、入力時に確認不要な別箇所のモデル化は省くことでスムーズな入力を実現。
自動生成・加工マクロ
「自動生成」機能や、既存の入力メニューでは対応出来ない鉄骨納まりをカバーする「加工マクロ」でユーザーの業務の効率化に寄与。
KAPリンク
ファブリケーターの抱える問題点であるモデルと図面の分断を解決する専用リンク機能を『KAPシステム』と『実寸法師』で開発。
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