
国内の鉄骨専用CADソフトに於いて高いシェアを占める『S/F REAL4』の開発・販売をしている株式会社データロジック(代表取締役社長:波田 政幸)が、『S/F REAL4』の3D画像を通して鉄骨部材の積載シミュレーション及び、荷姿図作成が可能となる『S/F出荷計画』をリリースしました。
同社のソフトウェア開発は、「ユーザー目線での利便性」をコンセプトとしており、今回リリースしたサービスもファブリケーターが行うトラックへの「積込み」、現場での「荷下ろし」工程での省力化、効率化をテーマに開発されました。
今回、steelnaviも注目する『S/F出荷計画』について、株式会社データロジック 林課長(以下、林氏)にお話を伺いました。
『S/F出荷計画』開発の経緯について
steelnavi : ユーザーから開発要望があったと伺いました
はい。働き方改革をきっかけとして、2019年からの5年間の猶予期間中にユーザーから積込効率化・システム化に就いて多数の要望が寄せられたことが開発の大きな動機です。
労働時間の上限が設けられ、労働時間が厳しく管理されるようになったことで、従来属人化していた作業の一般化・システム化への現場ニーズ・動きが本格化してきました。 積込・積み下ろし業務に関して様々な人が担当することで、やはりベテランと作業に慣れていない方では、業務時間に大きな差が出てしまうことが以前からの課題でした。

働き方改革に対応していくには、作業標準化の観点からIT化することにより、作業前に積み込む材料や順番、簡単に荷姿図が作成できれば、経験による大きな差が生じない対応が出来るのではないかとの、ユーザーの声があちこちから聞こえるようになりました。
それを受けて、社内外にヒアリングしながら『S/F出荷計画』の検討・開発が始まったというのが経緯です。
steelnavi : どこまでユーザーの要求を機能実装したのでしょうか
ユーザーから特に要望が強かった3つを軸に実装しています。



トラックの見積もり
ファブさんが見積を出す際、鉄骨運搬用にトラックが何台必要かというのは事前に必要な情報ですが、台数不足で輸送できない、では話にならないので、経験則から大体1~2台多めにトラックを手配することが実態であり、そのことにより「運搬費がかさむ」といった声は多く、改善できないかという要望は従来から寄せられていました。
荷姿図の作成
最近では、元請から「事前に荷姿図を出してください」というケースが多くなりました。積込計画(現場にどういう形状で鉄骨が入ってくるのか)を事前に入手することで、より安全に配慮したいとの姿勢ですね。
但し、実務の現場では積込計画策定に際し、ファブの経験値の高いベテラン社員がREAL4の3Dを見て、重量を確認し、図面から上向き・横向きからの形状を「想像」したりすることで対応せざるを得ず、実際に積み込むとファスナーが外回りに多く付いて入らない、計画上の向きでは入らないなど、ベテランが対応しても問題は多数起こっていました。
なんとか事前に積込明細確認出来ないかという要望に対応すべく、REAL4のデータを利用して、安全面・施工順番の効率面等にも考慮した、『確実に載せられる荷姿図』を何とか提供したい、と検討を重ねた結果として今回『S/F出荷計画』をリリースしました。
人手不足・属人化業務解消
人手不足はどこでも深刻な問題、また人材育成は大きな課題です。
『S/F出荷計画』を利用すれば出荷関連のすべての問題が解決する、は言い過ぎですが、ベテランでも新人でも積込・干渉チェック・荷下ろし業務のシミュレーションが事前に可能になります。それにより、属人化していた作業が標準化される=DX化となり、人手不足や育成の問題を解消する一助にできるのではないかと考えました。
steelnavi : 例えばハイグレードファブは1日にトラック何台くらい出すのでしょうか
大規模なファブで多忙期は、1日にトラック5~8台とか。1,000t程度の物件を積込計画すると、トラックの大きさにもよりますが約100~150台必要になります。


1台あたりの積込を60%で計画⇒70%に改善するだけでも、その効果は大きく、積載効率改善により、全体を通して運搬費がかなり絞られます。ファブ側は安全を確保した上で、積込作業効率を高め、台数を減らせる。全体で考えれば大きな省力化となります。
steelnavi : 各ファブによって、独自の積み方があるのでしょうか
パターンは大体決まっていますが、安全性を考慮すると段差をつけたくないというのは皆同じようです。段差をつけるとグラグラしてしまいますからね。
月にトラック数台しか使わない積込にはあまりメリットを感じないかもしれませんが、台数が増えるほど作業効率の高さの効果が実感され、人手不足・属人化業務解消には大きく貢献すると思います。
サービス実装にあたり対応出来なかった、または省いた機能
『S/F出荷計画』があれば如何なるケースにも対応可能、と言いたいところですがそういうわけにはいきませんでした。ファブ・運搬会社ともに安全面を含め各社なりの積込のセオリーや経験値があるわけで、ある意味当然ですが、『S/F出荷計画』の標準バージョンではそうした各社個別条件には対応できていません。
『S/F出荷計画』試用期間中に、こうした各社独自のケースにも対応を試みましたが、やはり自動計算のみでは複雑な形状の製品に対応できず、空間にただ載っている、というような状態となることもありました。
今後はパラメーターを増やす等の条件設定により、こうしたケースにも対応すべくサービス実装していきたいと考えています。
steelnavi : それを踏まえてリリースした理由とは

通常業務で出てくる帳票は荷姿図ではなく指示書のようなものが一般です。この指示書を営業や総務が荷姿図として実際作業に使用できるように変換するような追加作業を行って対応しているわけで、出荷には多くの人工を要しています。こうした作業が『S/F出荷計画』で自動化することにより、効率化・省力化できるはずで、ユーザーにとって大きなメリットになると考えています。
弊社が提供している各種帳票(発注書、荷姿図、案内図など)の出力機能は、ユーザーであるファブリケーター様の意見を反映したサービスとなっているため、内容に関して満足してもらえる仕様となっています。
積込の自動化については、すでに導入していただいているお客様から追加の要望や条件を頂戴し、それらを実装することで安全面を確保した上で自動化できたケースも出てきています。今後も半年を目途にバージョンアップしていく予定です。
もうひとつ対応出来ていない機能として、「ウマ」と「リンギ」です。データ上でイメージとして知りたいという要望がすでにあります。
鋼材と鋼材の間に挟む「リンギ」、鋼材の高さを調整する「ウマ」 (鋼製架台で出来ている)は、ソフトウェア上に反映出来ていないのが現状です。ファブさん側でREAL4の鋼材情報を利用して「ウマ」「リンギ」を反映している場合もありました。『S/F出荷計画』にはその機能が無いので、実装したらより一層イメージがしやすくなると考えています。
開発に苦労した点
steelnavi : 開発の課題や苦労した点はありましたか
一番は操作性です。3次元の空間上でどう動かすかが大きな課題でした。空間上でマウスを自由に動かせるのが良いか、もしくはX・Y・Z軸(縦・横・奥行)に沿って動かす方が良いのか、ユーザーにとってより良い操作性はどちらか相当悩みました。

事前リサーチを約50社お願いし、試験的に使用していただきました結果として「荷姿図の作成」が、このソフトウェアに於ける最も重要な機能であることを確認、そのための操作性を一番意識しました。
例えば、鋼材を吊るした実際のクレーン操作も、PC画面上でX・Y・Z軸で動かすのと同様の動作で行うことができるので、作業イメージがしやすいと思います。尚、積込の際には既に製品として仕上がっていて、ガセットやファスナープレートが飛び出ているケースも出てきます。そうしたケースでは自動でずらす(避ける)ことができるように考えています。
また、製品を重ねて載せることを要望として挙げられています。現状ではまだ自動化は難しいですが、シミュレーションとして判断することは可能になります。
サービス運用やサポート、PR活動について
steelnavi : カスタマーサポートとして、WEBサイト「おしえて☆く~ちゃん」、LINEからAIサポート機能「く~chat」がありますが、どのように運用しているのでしょうか
24時間サポートできる機能として、WEBサイトに「FAQサイトおしえて☆く~ちゃん」、公式LINEからAI「く~chat」があります。
どちらもインフォメーションサポート時間外での問題解決ができ、インフォメーションが混みあってなかなか電話が繋がらない時でも、自己解決の手段として使用していただけます。

「FAQサイトおしえて☆く~ちゃん」は、ユーザーが質問した内容を文字検索し、ヒットした回答がいくつか表示されます。例えば、梁・大梁・仕口など入力すると、それに該当するQ&Aがいろいろ出てきます。
回答は、画像付きで作業手順をわかりやすくしています。未対応の場合の回避策や機能追加のバージョンも記載しています。また、問題の解決方法だけでなく仕様についても記載しています。

AI(く~chat)は、人と話すような自然な会話形式でご質問していただけます。
一般的なAIはインターネット上の情報を元に回答しますが、弊社ソフトウェアに関する特有情報は、ネット上には掲載されていないことが多いため、情報を拾うことが出来ません。
そこで、く~chatでは、弊社独自に構築したデータベースを活用しています。
このデータベースは、20年以上にわたり蓄積された電話サポートのノウハウを元に作られており、エラーや不具合に関する正確な情報を素早く探し出せる仕組みになっています。
どちらもきっとユーザーのお役に立つ回答ができると思いますので、是非ご活用ください!
Instagramでは、日々の様子を投稿することで、弊社をより身近に感じていただけるよう心がけています。お知らせも随時更新しており、手軽に情報をチェックいただけます。また、鉄工所のみなさんとの交流を通じて、思いがけない知識を得る機会もありました。
LINE公式アカウントでは、メールよりもスピーディーに、バージョンアップ情報やオンラインセミナーの案内をお届けしています。
YouTubeでは、営業スタッフ2名が月1回、LINEで配信していた機能紹介セミナーを、YouTubeでもライブ配信しています。実際にYouTubeの方が視聴数が多く、視聴者からのコメントも多く寄せられるため、より広く・簡単に情報を届けられると実感しています。
配信内容はアーカイブとしてYouTubeに保存しており、見逃した方も後からご覧いただけるとご好評をいただいています。
公式LINE: https://lin.ee/cG1M7FB
公式Instagram:https://www.instagram.com/datalogic_sf/
YouTube:https://www.youtube.com/@datalogicChannel
リリース後のユーザーの反響について
steelnavi : ユーザーの反響や反応、評価はどうだったでしょうか
ユーザーからの反響は、さきほど話した内容と重複しますが、初回版なので完璧ではない部分もあり、要望は多数寄せられています。もっとこういう機能があったら便利だ、この機能が欲しいというお声はたくさんいだいています。
当然のことではありますがREAL4も当初は使い勝手に問題はありましたが、辛抱強く生のユーザーの声を受け止めて、改良を重ねて現在の姿になっています。引き続き同様の努力を継続していきたいと思っています。

ユーザーもそれを理解いただいているようで、「バージョンアップでやってもらえるでしょう?」との声を頂戴しています。
リリースしたばかりなので、まだまだ実務担当の皆様に満足いただけるレベルにはなっていないかもしれませんが、これからもより良いサービスを提供できるように心がけます。
ユーザー以外にも各方面から反響がありました。運搬会社さんに『S/F出荷計画』を見せたら喜んでいたとか、意外に良かったのが現場の鳶さんです。建て方をする上で荷下ろしの際、どんな形状で入ってくるかは鳶さんが知りたいところですから「荷姿図から事前にわかるのはすごく便利!」と現場が盛り上がった、などの話も伺っています。
steelnavi : 現場の声を聞ける環境があるというのは大事ですね
約50社に試験運用していただき、様々なお声をいただきました。やはり「現場に答えはある」、現場の声を聴くことが近道なのかなと思います。同じ様な事項に対しても細部条件は色々で、弊社経験からの発想も合わせて開発していきました。皆さんからの「良いソフトウェアを作って欲しい」という気持ちがひしひしと伝わり本当に有難かったです。
検討中のユーザーに特に強調したい点
steelnavi : 『S/F出荷計画』で特に強調したい点があれば教えてください
『S/F出荷計画』は、「見える化」が大きなポイントです。
と申しましても、実は「見える化」が当初の目的ではありませんでした。
積込作業を通じて、積込中に最後の鉄骨が載らなかった、営業が計画していたが現場では載せられない、トラック台数を多く見積もり過ぎた、帳票があっても実際に積込状態は現地で把握し時間がかかる、運搬会社も時間制限がある、といった様々な問題が現場では頻発していました。

荷姿図を作ることによって、上記問題に対応する各所関係者それぞれが全体データを把握でき、より早く・安全に進められることが明確になり、結果として、誰が見ても一目瞭然の「見える化」が上記の様な問題の解決策である、との結論に辿り着いたというわけです。
また、セットバックする時の柱の向きの検討や、かなり複雑な形状の梁(合掌梁、ガセットやブレースシート、ファスナーなど二次部材)の時にはどう対応すべきかなど、シミュレーションにも活用いただけます。人材育成にも大きく貢献すると考えています。
ソフトウェア共通で開発時に注意している点
steelnavi : ユーザーの利便性を特に大事に捉えてらっしゃいますが
「使いやすい」ことが非常に大事と捉えています。弊社は約30年、先代社長の時代から「使いやすい・誰でも使える」をモットーにシステム開発してきています。この業界に入ってきた新人、新卒、外国籍の社員でも、専門知識が無くても操作ができるというのが弊社製品の強みだと思っています。
特にこの『S/F出荷計画』は、パソコン操作が不得意な方も使用するケースが多いであろうという前提に作っています。
試験運用時に、工場のベテラン社員でパソコンを使用していない方に操作していただくと、マウスを動かすのにも少し時間が掛かったりするケースがあり、更に簡単な操作、誰もが使える操作性が重要だと気付かされました。今後も操作性に関しては重要事項と捉えています。
他社も同様のソフト開発を進めているようですが、鉄骨業界最大のシェアを誇るREAL4の使い勝手とデータ親和性から、『S/F出荷計画』の操作性に一日の長があるとの評価をいただくことが多いです。
今後の展望について
steelnavi : 今後の展望について教えてください
最終的にはファブの業務プロセスをトータルで扱えるソフトウェアとして発展していきたいと考えています。
IT化が進んでいる企業や業務もありますが、業務プロセスが個別に分断され、個別最適のシステム化が行われているケースが多く、これが却って全体のDX化の妨げとなっています。 現状弊社開発の各ソフトウェアである、図面作成に特化した『S/F REAL4』、積込・出荷に特化した『S/F出荷計画』、生産管理に特化した『S/F生産計画』など、それぞれの業務に対応する格好で動いていますが、『S/F REAL4』を中心とした、ファブの業務全体のDX化を実現する一気通貫の仕組みを作り上げていきたい、と思っています。
steelnavi : 一気通貫の話がでましたが、BIM対応の進みについてどう感じていますか
将来的には、BIM対応はもっと進むであろうと見据えています。現状ではまだまだですが、設計図の段階で作成されたRevitデータをREAL4と連携させるユーザーもいます。ファブ側はまだBIM対応にメリットを見出せていないところがありますが、国やゼネコンはすでに動いていますので、業界全体でBIM対応は避けて通れないですし、BIMの時代になってくると思います。BIMの活用を含め、現場のDX化を支援することで、我々が生きる建設業界の更なる生産性向上に貢献したいと思っています。

「有難いことに鉄骨業界ではREAL4ユーザーが非常に多く、そのユーザーから得ている長年の要望や意見は、開発の大きな強みであり、弊社の財産です」と、データロジック林氏が言います。
よりユーザーの使い勝手を考慮したサービスとなるよう、今後も引き続き定期的なソフトウェア改修を行う予定とのことです。今後のデータロジック社の活動に注目です。
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