建設業界 2024年問題

2024年4月から施行となる「時間外労働の上限規制厳格化」

「時間外労働の上限規制調査」(2023年:アンドパッド)

株式会社アンドパッドは、建設業界においても2024年4月から施行となる時間外労働の上限規制厳格化に関して、幅広い職種で勤務する20〜69歳の建設業従事者に対し、認知・対応状況に関する独自調査を実施。

その結果、「時間外労働の上限規制厳格化」の認知は67.1%、残業削減の効果を実感しているのは23.4%という結果となりました。

残業を削減していくにあたり、調査対象の経営層のうち約半数がDXが重要と考えており、DXによる業務効率化は現場のみならず経営者からの要望も高い結果となりました。DXによる事務・管理作業の工数軽減と、それによるコア業務集中の実現という業界内に限らない課題が浮き彫りとなる形となりました。

制度認知と取り組みの現状

「時間外労働の上限規制厳格化」の認知は67.1%と高まる(図1)。特にゼネコンでの認知は高く、81.0%以上の回答者が制度を認知していると回答した。

残業抑制への取組状況も全体の43.9%が取り組んでいる状況であるが、実感しているのは23.4%(図2)。

時間外労働の上限規制厳格化

また、残業を45時間以上行っている回答者のうち、50.7%以上が残業を減らすための取組を行えていないと回答(図3)。

残業時間を削減するために、労働時間の管理・残業時間の管理、週休2日制の導入などを行っている企業が多い結果となった。DX化については、約4割の人が行いたいと回答(図4)。

残業時間別の取組状況

実際の業務内容と稼働時間

日常の業務のうち、3時間以上「現場での作業・監督業務」を行っている人が約30%、3時間以上「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」を行っている人は約25%(図5)。

業務効率化したい業務は、「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」がトップとなった(図6)。

効率化が期待される「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」は、業務効率化により「現場での作業・監督業務」などのコア業務への集中が可能になるため、さらなる品質向上や安全性の確保が可能になる。

業務効率化における経営層のDX化への考え

時間外労働の上限規制に対応するうえで、DX化(業務効率化のためのITツールやシステムの導⼊)の重要性について、経営層の49.2%が重要と考えている(図7)。特にゼネコン、外構・エクステリア・造園、ガス・電気の領域で顕著に現れた。

業務効率化における経営層のDX化への考え

取り組み内容

制度対応に向け導入した方が良い取り組みとして、「DX化」「テレワークの導⼊」「残業に関するヒアリング」は、経営層と⼀般社員・管理層のスコア差が⼤きく、現場からの要望が高いことが分かる。

導入した方が良いシステムとしては、経営層と⼀般社員・管理層ともに「施⼯管理」のスコアが⾼いが、⼀般社員・管理層の方がスコアが高く、経営層よりも現場からの要望が高い。

取り組みが進まない理由としては、工期優先など建設業界ならではの理由が上がっているが、「IT化が遅れアナログな手法が当たり前になっている」、⼀般社員・管理層においては「取り組みを推進する役割の人材がいない」という課題を問題視する声が多かった。

DX化取り組み内容

最後に

時間外労働上限規制は、2018年に働き方改革関連法による労働基準法改正法が公布され、多くの業界では既に導入されたルールであったが、建設業界においては猶予期間が設けられていた。

業界団体や各メディア報道などにより業界内の認知は高まってきているが、取り組み状況としては待ったなしの状態であると言える。取り組みを開始していない企業において、45時間/月以上の残業をしている傾向にあり、規程の時間よりも残業時間が超過している場合は、適応に向けた取り組みの開始・浸透を急ぎ図る必要があると言える。

現場に携わる人々からは、日頃業務量が多い「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」のペーパーワークへの業務効率化が強く求められており、この分野を効率化できるDXツールの活用が求められている。社内で推進者をたて取り組んでいくことが成果を出すための近道と言えそうだ。

調査概要:時間外労働の上限規制に関する調査

調査内容:建設業(各16業種)の2024年問題における認知・対応状況の把握、残業時間、対策と課題
調査方法:インターネット調査
調査主体:株式会社アンドパッド
調査時期:2023年10月
調査対象:20〜69歳の建設業従事者
有効回答数:1,442件