帝国データバンクは、2022年度の「建設業」倒産動向発生状況について調査・分析を行った。
建設業の倒産が急増、3年ぶり増加 経営を襲う「三重苦」
調査結果:「建設業」月別倒産件数推移
2022年度(22年4月-23年3月)の建設業における倒産は1,291件だった。
歴史的低水準が続いた2020-21年度に比べて大幅に増加したほか、単月でも2023年3月(155件)は、2016年8月(154件)以来約6年半ぶりの高水準となるなど、急増傾向が鮮明となっている。
2022年度の人手不足倒産、全体のうち4件中1件は建設業
建設業では、コロナ禍での商談や工事の遅れといったマイナスの影響があったものの、コロナ融資をはじめ政府の資金繰り支援策が奏功し、倒産は2021年度に過去20年で最少を更新するなど、記録的な低水準が続いた。
他方で、鉄骨や木材、給湯器をはじめとした住設機器など多岐にわたる建設資材の価格が品薄により急騰し、工事原価の上昇を招いている。
こうした「物価高」を要因とした倒産は徐々に割合が高まっており、2022年7月の建設業倒産では1割超が物価高を要因としたものだった。
また、2022年度の人手不足倒産全体のうち4件中1件は建設業が占めるなど人手不足も深刻化しており、建築士や施工管理者など業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の離職で事業運営が困難になったケースも目立つ。
その結果、建設現場で「資材が来ない」「予算よりも価格が高い」「人がいない」などの常態化により、工期も「ずれ込む」悪循環が発生しやすい環境となり、中小建設業の倒産を押し上げる要因となっている。
物価高や人件費上昇で、工事原価は増加傾向が続く
建設業では今後も、国交省直轄工事ではじまった総合評価落札方式の「賃上げ加点」などをはじめ、人手確保目的など内外からの賃上げ圧力に晒される。コロナ禍で多くが導入したゼロゼロ融資の返済もピークを迎えるなか、各種コストの増加分を価格に転嫁する「発言力」に乏しい中小零細規模の建設業を中心に、当面は倒産増加の傾向が続く可能性が高い。